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歯科
親知らずの痛みを今すぐ和らげる方法|歯科医師が教える応急処置と根本的な解決策

【この記事の監修歯科医師】

神奈川歯科大学卒業。
公益社団法人 日本口腔外科学会 認定医。
「再治療のない、丁寧な治療」をモットーに日々情熱を注いでいます。
歯科のお悩みならなんでもご相談ください。
親知らずの突然の痛みでお困りではありませんか?夜中や休日に激痛が起こると、どう対処すべきか分からず不安になりますよね。
この記事では、現役歯科医師が親知らずの痛みの原因から即効性のある応急処置、抜歯が必要かどうかの判断基準まで詳しく解説します。
正しい知識を身につけて、適切な対処ができるようになりましょう。
親知らずの痛みの原因を歯科医師が解説
「親知らずがズキズキ痛む」「腫れて口が開けづらい」「奥歯がうずくような感覚がある」
このようなお悩みを、多くの患者さんからご相談をいただきます。
親知らず(=智歯)が痛む原因には、いくつかの代表的なパターンがあります。
今回は、特に多い3つの原因について、歯科医師の視点でわかりやすくご紹介します。
智歯周囲炎(歯茎の炎症)による痛み
親知らずのまわりに細菌がたまって歯ぐきが腫れ、炎症が起きる状態です。
これは、親知らずが中途半端に生えていたり、斜め・横向きに生えていて歯ぐきがかぶさっている場合に起こりやすくなります。
〈主な症状〉
- 歯ぐきが赤く腫れる
- 噛むとズキズキ痛む
- 口が開けづらい・のどの奥まで痛い
- 発熱や膿(うみ)が出ることも
応急処置として抗生剤やうがい薬で炎症を抑えることもありますが、再発を繰り返すことが多く、抜歯が推奨されることもあります。
萌出時痛(生える時の痛み)のメカニズム
親知らずがあごの骨や歯ぐきを押し分けて生えてくる際、周囲の組織に強い圧がかかることで痛みを感じることがあります。
特に10代後半〜20代前半に多く見られます。
〈主な症状〉
- 成長期に合わせて周期的な痛みが起こる
- 噛み合わせの違和感
- 周囲の歯に押されるような痛み
この痛みは一時的なこともありますが、スペース不足や斜め方向への萌出が原因の場合、周囲の歯列に悪影響を与えることも。
早めに歯科でレントゲン検査を受けておくことをおすすめします。
虫歯・歯周病による痛み
親知らずは一番奥にあり、歯ブラシが届きにくいため、虫歯や歯周病のリスクが非常に高い歯です。
また、親知らずとその手前の歯の間に汚れがたまりやすく、手前の大事な歯まで巻き込んでしまうケースもあります。
〈主な症状〉
- 冷たいものや甘いものがしみる(虫歯)
- 噛んだときに鈍い痛みがある
- 歯ぐきの腫れや出血、口臭が気になる
親知らずが虫歯になった場合、治療が難しい位置にあることが多く、抜歯を検討するケースもあります。
一方、早期であれば清掃指導や部分的なクリーニングで対応できることもあります。
親知らずが痛い時の応急処置

「突然、親知らずがズキズキして眠れない」「休日で歯医者に行けない」
そんなとき、自宅でできる応急処置と、市販薬の上手な使い方を知っておくと安心です。
親知らずの痛みに対するセルフケアの方法と薬の選び方・飲み方をわかりやすくご紹介します。
即効性のある痛み止めの選び方と服用方法
親知らずの痛みに効く自宅でできる応急処置
1.冷やす(外から)
- 痛みや腫れがある場合は、頬の外側から冷やすのが効果的です。
- 保冷剤をタオルに包んで、10分冷やして10分休むの繰り返しが理想。
冷やしすぎに注意しましょう。
2.安静にする・刺激を避ける
- 痛い側で噛まない、固い物を避ける、熱い物を控えることで炎症を悪化させないようにしましょう。
- アルコールやタバコも炎症を広げるため避けた方が良いです。
3.うがいは控えめに
- 「膿が出たらうがいしたくなる…」という方もいますが、強いうがいは炎症部分を刺激して悪化させることがあります。
- うがいをするなら、ぬるま湯でやさしくおこないましょう。
歯科医師が推奨する「市販の痛み止め」の選び方
親知らずの痛みには、抗炎症作用が強く、即効性のある鎮痛剤が向いています。
以下は、ドラッグストアでも購入できるおすすめ成分です。
①イブプロフェン(例:イブA、バファリンルナi、ナロンエースなど)
- 抗炎症+鎮痛作用のバランスがよく、歯の痛みに向いている
- 胃にやさしいタイプも多い
- 最も一般的な第一選択薬
②ロキソプロフェン(例:ロキソニンSシリーズ)
- 即効性があり、効果が強い(歯科でも処方されることが多い)
- ロキソニンSプレミアムには鎮静成分も配合されており、痛み+緊張があるときにおすすめ
- 空腹時の服用は避け、胃薬と併用するのが望ましい
③アセトアミノフェン(例:タイレノール、ノーシン、バファリンルナJなど)
- 副作用が少なく、妊婦さんや胃が弱い方でも使いやすい
- 抗炎症作用はやや弱めのため、軽度の痛みに適応
〈鎮痛薬の正しい飲み方と注意点〉
- 空腹時は避ける(胃を荒らす原因に)
- 水またはぬるま湯でしっかり飲む
- 決められた間隔(通常4~6時間)を守る
- 効果が切れる前に重ねて飲まない(過剰摂取に注意)
2~3日で痛みが治まらない場合や、腫れ・発熱が続く場合は歯科を受診しましょう。
痛み止めはあくまで「一時的な対症療法」であり、根本の原因(智歯周囲炎・虫歯など)を治すには専門的な処置が必要です。
正しい冷やし方と絶対NGな冷却方法
正しい冷やし方:ポイントは“やさしく外から”
〈冷やすタイミング〉
- ズキズキと拍動するような痛み
- 歯ぐきが腫れて熱っぽい
- 痛みで眠れないとき
こうした症状があるときは、外側からの冷却が有効です。
〈正しい冷却の方法〉
- 保冷剤または氷をタオルで包み、直接肌に当てず、タオルでくるんでやさしく当てましょう。
- 10分冷やして、10分休みましょう。
長時間当てっぱなしは血行が悪くなるため逆効果です。
- ほほの外側から冷やしましょう。(口の中ではなく)
痛い部分の“外側”に当ててください。
※冷やすのはあくまで応急処置です。炎症の根本を治すには歯科治療が必要です。
〈やってはいけないNG冷却法〉
1.氷や保冷剤を直接肌に当てる
→皮膚が冷えすぎて凍傷や感覚麻痺になるリスクがあります。
2.長時間当てっぱなし
→冷やしすぎると血流が悪くなり、かえって治りが遅れる可能性があります。
3.痛い部分を口の中から冷やす
→氷を口に含んだり、水で長時間うがいするのは刺激になり、炎症を広げることもあります。
4.腫れがないのに冷やす
→炎症ではなく神経痛や慢性痛の場合、冷やすことでかえって痛みが強くなることもあります。
〈こんなときは冷やさず、すぐ受診!〉
- 痛みが強く、顔が腫れてきた
- 口が開かない、物が食べられない
- 発熱やリンパの腫れがある
- 膿(うみ)が出ている感じがする
これらの症状がある場合、自己判断で冷やすよりも歯科医院での処置が優先されます。
市販薬や冷却では限界があるため、早めの診察をおすすめします。
親知らずの抜歯が必要か判断する基準

「親知らず、抜いたほうがいいって言われたけど、痛くないしそのままでもいい気がする」そんなお悩みを抱えていませんか?
実は、親知らずはすべてを抜く必要があるわけではありません。
しかし、放っておくとトラブルの原因になるケースも多く、早めの判断が大切です。
抜歯が必要な親知らずの特徴
〈抜歯が必要な親知らずの特徴〉
以下のような特徴がある親知らずは、将来的なリスクを考慮して抜歯が推奨されます。
1.横向き・斜めに生えている親知らず
- 隣の歯(第2大臼歯)を押して、歯並びやかみ合わせに悪影響
- 清掃ができず、虫歯や歯周病の温床になりやすい
2.一部しか生えておらず、歯ぐきがかぶっている親知らず
- 食べかすや細菌がたまりやすく、智歯周囲炎(炎症・腫れ)を繰り返す
- 口が開かなくなったり、頬まで腫れることも
3.虫歯・歯周病になっている、またはなりかけている親知らず
- 一番奥にあるため治療がしにくい
- 隣の健康な歯まで巻き込んでしまうリスクが高い
4.生えるスペースがない親知らず
- あごが小さい現代人では、真っすぐ生える親知らずは少数派
- 痛みや炎症が起きやすい状態といえます
5.矯正治療を予定している
- 親知らずがあることで歯並びの後戻りを起こす可能性があるため、事前に抜歯をすすめられることもある
抜歯しなくても良い親知らずの条件
以下のような親知らずは、無理に抜く必要はなく、定期的なチェックで経過観察することが多いです。
1.完全にまっすぐ生えていて、かみ合っている
- 歯としてきちんと機能していれば、問題ない
- ブラッシングがしっかりできていることが前提
2.痛みや腫れが一度も起きたことがない
- かつ、レントゲンで周囲の歯や骨に問題がない場合は経過観察でOK
3.あごの骨の中に完全に埋まっている(埋伏歯)
- 将来的に動く・悪化する可能性が低く、無症状なら無理に抜かない判断も
- ただし、のう胞(嚢胞)形成や骨吸収の兆候がある場合は要注意
親知らずの予防管理|抜かずに済む方法
「親知らず、できれば抜きたくない…」
多くの方がそう思うのではないでしょうか?
実は、すべての親知らずが抜歯対象ではありません。
正しくケアしていけば、将来にわたってトラブルなく残せるケースもあります。
「親知らずを抜かずに済ませるためにできること」として、
日々のセルフケア・歯科でのチェックの重要性についてご紹介します。
効果的な口腔ケア方法
親知らずは口の奥に位置し、歯ブラシが届きにくく、磨き残しが起こりやすい場所です。
しっかりとケアしないと、虫歯・歯周病・炎症(智歯周囲炎)に発展しやすくなります。
〈歯ブラシの工夫〉
- 小さめのヘッドの歯ブラシを使う
- 奥まで届くよう、やや斜め後方からブラッシング
- 歯と歯ぐきの境目を意識して優しく磨く
〈フロス・歯間ブラシの活用〉
- 手前の歯との間に汚れがたまりやすいため、フロスで毎日の清掃を行う
- 親知らず周囲のポケットが深い場合は、歯間ブラシの併用が有効
〈抗菌性マウスウォッシュで補助〉
殺菌成分(CPCやクロルヘキシジンなど)入りの洗口剤を使うと、細菌の繁殖を抑制できます。
「毎日しっかり磨く」より、「磨きにくいところを把握して磨く」ことが大切です。
定期検診での早期発見の重要性
早期発見・早期対策で「抜かずに済む」可能性が広がります。
「親知らずは痛くなってから考えればいい」と思っていませんか?
実際には、痛みが出たときにはすでに抜歯が必要な状態であることが多いのです。
〈定期検診でわかること〉
- 親知らずの位置や向き(レントゲンで確認)
- 歯ぐきの腫れ・出血・ポケットの深さ
- 隣の歯への影響(虫歯・圧迫・骨吸収)
- ブラッシングで届いていないリスク部位
親知らずの状態を定期的にチェックすることで、「今は抜かなくてよい」「将来リスクが高くなったら抜歯」と段階的に判断できます。
〈抜かずに親知らずを保つための“予防管理まとめ”〉
管理内容 | 目的 | 頻度・ポイント |
正しいブラッシング | 虫歯・炎症の予防 | 毎日、奥歯まで意識して磨く |
デンタルフロス使用 | 隣の歯との間の清掃 | 毎晩寝る前に使用がおすすめ |
抗菌性うがい薬 | 細菌の抑制 | 炎症が起きやすい時期に活用 |
歯科検診とクリーニング | 早期発見・予防処置 | 3〜6ヶ月に一度が理想 |
レントゲン診査 | 隠れた問題の確認 | 年1回〜必要に応じて |
親知らずの痛みに関するよくある質問

親知らずが痛い時、市販薬で様子を見ても大丈夫ですか?
根本的な原因(智歯周囲炎、虫歯、埋伏など)を治さなければ、再発を繰り返す・悪化する可能性があります。
一時的な応急処置としてはOKですが、長引く場合は必ず受診をしてください。
市販の痛み止め(ロキソニン・イブなど)は、親知らずの痛みにもある程度効果があります。
特に、ズキズキするような炎症痛や腫れには有効ですが、これはあくまで一時的に症状を抑える手段です。
妊娠中・授乳中の親知らずの痛みにはどう対処すべきですか?
自己判断で薬を飲まず、歯科で相談してください。
妊娠中や授乳中はホルモンバランスの変化により、歯ぐきの腫れや炎症が起きやすい時期です。
親知らずの痛みも妊娠期に悪化することがあります。
妊娠中は抜歯を避けることが多いですが、どうしても必要な場合は安定期(妊娠中期)に対応可能なケースもあります。
上の親知らずと下の親知らずで抜歯の難易度は違いますか?
一般的に、下の親知らずの方が難易度が高いです。
上の親知らずは、比較的まっすぐ生えていることが多く、抜歯も短時間で済みやすい傾向があります。
一方で、下の親知らずは横向きや斜めに埋まっているケースが多く、顎の神経にも近いため、処置の難易度が上がります。
難しいケースでも、CTで位置関係を確認し、安全に処置を行うことが可能です。
大学病院や口腔外科専門医と連携して対応することもあります。
まとめ
親知らずは、「抜くしかない」と思われがちですが、状態によっては抜かずにすむ場合もあります。
大切なのは、「今どうか」だけでなく、将来的にどんなリスクがあるかを知ることです。
自己判断で放置した結果、腫れや痛みが悪化したり、周囲の歯にまで影響を及ぼすことも少なくありません。
市販薬や冷却などの応急処置で痛みを和らげることはできますが、根本的な原因を取り除くには歯科での診察が必要です。
当院では、親知らずの状態をレントゲンやCTでしっかり確認し、
「抜くべきかどうか」「抜くならいつがベストか」を患者さんのライフスタイルも含めて一緒に考えていきます。
「なんとなく気になるけど、そのままにしていた」
そんな方も、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
“抜く・抜かない”の前に、“正しく知る”ことが第一歩です。